子宮頸がんとは? | 子宮頸がんは子宮の入り口にできる癌で、ほとんどはヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが原因で起こります。
日本では1年間に約10000人がかかり、毎年2800人が死亡しています。 |
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子宮頚がんの原因 | 子宮頸がんの95%以上の原因がHPVというウイルスです。
このウイルスは性交渉で感染し、性交経験者の50〜80%は感染したことがあるとされています。 HPVのウイルスは感染しても定着しにくく、すぐに排除されることが多いですが、 免疫の異常などにより子宮頸部に長く残ると数年から数十年かけて、 異形成と呼ばれる前癌状態を経て子宮頸がんへと進行します。 HPVウイルスには多数の種類があり、子宮頸がんの原因となるのはHPV16型、18型が多いです。 |
子宮頸がんの予防は? 子宮頸がんの検査は? |
子宮頸がんの90%はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染で発症しますから、
一次予防としては性交渉が開始される以前にHPVワクチンの接種をすることです。 二次予防には定期的な頸がん検診が必要です。 一般的には子宮頸部細胞診が行われますが、採取する器具や検体の処理にはいくつかの方法があります。 細胞診の結果は正常であるNILM、軽度の異常が疑われるASC-US、高度の異常が疑われるASC-H、 前癌状態である異形成が疑われるLSIL、HSILや癌が疑われるSCCなどの判定で示されます。 その結果を受けて必要があれば精密検査としてコルポスコープを使用した組織診やHPVウイルスの検査をすることになります。 |
子宮頸がんの治療は? | 前癌状態である子宮頸部異形成と初期病変である上皮内癌(0期)に対しては
子宮頸部を円錐状に切除する円錐切除術をします。 この円錐切除術はレーザーや電気メスを用いて行いますが、日帰り手術や1〜2日の入院で行われます。 進行した子宮頸がんには根治術と呼ばれる手術と放射線治療、制癌剤治療を組み合わせて行います。 進行がんの治療後の後遺症として排尿障害、リンパ浮腫卵巣欠落症状として更年期障害が起こることが あります。 このような後遺症を残さないためにも定期的に子宮頸がん検診をして、前癌状態から上皮内癌までの間に発見することが大切です。 |
ウイルスが原因となる癌は? | すべての癌の原因が明らかになっているわけではありませんが、ウイルスや細菌が発癌に関与している癌があります。
ヘリコバクターピロリ菌による胃癌、B型・C型肝炎ウイルス(HBV・HCV)による肝臓癌、 ヒトパピローマウイルス(HPV)による子宮頸癌、外陰癌、膣癌、陰茎癌、肛門癌、口腔癌、中咽頭癌、 エブスタインバーウイルス(EBV)による上咽頭癌、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫 さらにヒト細胞白血病ウイルス(HTLV1型)による成人T細胞白血病、リンパ腫があります。 |
HPVワクチンとは? | HPVワクチンは1983年にドイツのHausen博士が子宮頸癌の組織から
HPV(ヒューマンパピローマウイルス)の16型と18型の分離に成功したことから始まります。 Hausen博士はその功績により2008年ノーベル医学生理学賞を受賞しました。 1992年にHPVワクチンの抗原であるVLP(ウイルス様粒子)の精製に成功し、VLPを用いたHPVワクチンが2000年に開発されました。 |
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HPVワクチンの種類は? | 現在は3種類のHPVワクチンがあります。
サーバリックス(2価ワクチン)HPV16・18型 ガーダシル(4価ワクチン)HPV6・11・16・18型 シルガード(9価ワクチン)HPV6・11・16・18・31・33・45・52・58型 サーバリックスは子宮頸がんの予防に、ガーダシルは子宮頸癌とコンジローマの予防に、 シルガードは子宮頸がん、コンジローマ、外陰癌の予防に効果があります。 |
HPVワクチンの効果は? | 早くからHPVワクチンの接種が行われたオーストラリアイギリス、アメリカ、北欧では
ワクチン接種者で進行した子宮頸癌の発症はなくなりました。 オーストラリアでは2028年には子宮頸癌はなくなると予測されています。 2020年のスェーデンの調査では10〜16歳で接種すると98%の減少効果が認められたとのことです。 日本でも新潟県、秋田県、宮城県の調査で接種者での細胞診異常、前癌状態の異形成の減少が認められています。 |
日本におけるHPVワクチンの接種状況は? | 2013年4月にHPVワクチンの定期接種が開始され16歳までは公費負担で行われることになりましたが
同年6月には接種後の副反応、有害事象の事例がありマスコミなどでワクチンとの関連が報道されることになりました。 その結果、国の関連機関、各自治体からの対象者への積極的な勧奨は行われなくなりました。 約340万人が公費での接種を受けましたが、その後の6年間での接種者は45000人の増加にとどまっています。 2015年に副反応疑いが報告された2584件の追跡調査が行われました。 追跡可能であった1739例(67%)の90%の事例で症状の回復、軽快、通院不要の状態となったことが判明しました。 その後HPVワクチンの副反応に対する過度の不安から接種の勧奨を停止していた国の関連機関、各自治体は国内外の学会、 関連機関からの批判を受けて、ワクチン接種を勧奨するようになりました。 |
頻度 | サーバリック | ガーダシル |
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10%以上 | 注射部位の痛み・痒み・腫れ
腹痛、筋痛、関節痛、頭痛、疲労 |
注射部位の痛み・腫れ |
1〜10% | 蕁麻疹、めまい、発熱 | 注射部位の痒み・出血
頭痛、発熱 |
1%未満 | 注射部位の知覚異常、しびれ
全身脱力感 |
手足の痛み、腹痛 |
頻度不明 | 手足の痛み、失神 | 疲労感、失神、筋痛、関節痛 |